2026-07-29
深さ400メートルでも平気!?アフリカの湖で見つかった“潜水名人”の虫の幼虫
「虫は海にほとんどいない」というのは、生物の常識の一つとされてきました。その理由の一つとして、「水深が深くなると水圧が高まり、虫の体内の空気袋がつぶれてしまうから」という説明がよく挙げられます。ところが、アフリカ東部のマラウイ湖に住む小さなハエの仲間が、この“常識”を揺さぶる存在として注目されています。
研究対象は「Chaoborus edulis(カオボルス・エデュリス)」という湖バエの幼虫。体長は数ミリ程度ですが、毎日、水面近くと水深200メートル以上の深い場所を行き来する“縦断通勤”をしています。昼間は魚などの捕食者を避けるために深いところに潜り、夜になるとエサが豊富な浅い場所に戻ってくるのです。
この幼虫の体には「エアサック」と呼ばれる空気袋があり、浮き袋のような役割を果たします。袋の壁には「レジリン」という、ほぼ“理想的なゴム”のように振る舞うタンパク質が含まれており、幼虫が自分の体内の酸性度(pH)を変えることで、このレジリンを伸び縮みさせ、空気袋の大きさ=浮力を微調整していることが分かりました。
研究チームが幼虫を小さな圧力装置に入れて実験したところ、この空気袋は実際の生活水深よりずっと深い、400メートル相当の水圧でもつぶれなかったそうです。これほど強靭な“天然ゴム構造”があるなら、「深海の高圧が虫を締め出している」という従来の説明は、少なくとも完全ではなさそうだ、と研究者たちは述べています。
レジリンのような生体ゴムは、将来、人工筋肉や水中ロボットの浮力制御などのスマート素材に応用できるかもしれません。人間が作った潜水艦よりも、はるかに小さい“虫の潜水艇”のほうが、深海適応では一枚上手だった、というのはちょっと面白い話ですよね。
元記事: These insect submariners survive depths that should crush them