2026-07-29
「見えない炭」が教えてくれた、本当の洞窟絵画の年齢とは?
フランス南西部・ドルドーニュ地方にあるフォン=ド=ゴーム洞窟は、牛やバイソンなどの動物が色鮮やかに描かれた“ラスコー級”の有名洞窟です。でも、じつは「いつ描かれたのか」が長年はっきり分かっていませんでした。
研究チームが今回使ったのが「ハイパースペクトル画像」という技術。人間の目では区別できないほど細かい色の違いをカメラで拾い、コンピューターで分析する手法で、美術品の調査や衛星観測などにも使われています。この技術で黒い線を詳しく調べたところ、従来は鉱物だけだと思われていた黒い顔料の中に、ごく細かい炭(チャコール)が混ざっていることが判明しました。
炭が入っていると何が嬉しいのかというと、「放射性炭素年代測定」ができるようになること。木や骨など、かつて生きていたものに含まれる炭素の放射能を測ることで、おおよその年代を割り出す方法です。洞窟壁画では、顔料に有機物が含まれていないとこの手が使えません。
研究者たちは文化財保護当局から特別な許可を得て、絵をほとんど傷つけないレベルの“超微量サンプル”を採取し、慎重に年代を測定。その結果、あるバイソンの絵は約1万3000年前の「後期旧石器時代(クロマニヨン人の時代)」に描かれたことが分かりました。一方で、仮面のような人面の一部は、離れた時期に少しずつ描き足されていた可能性が高いことも見えてきたそうです。
つまりこの洞窟は、「一度だけ絵を描いて終わり」のキャンバスではなく、何千年にもわたって人々が何度も訪れ、絵を描き足しながら“聖なるギャラリー”を更新し続けていたのかもしれない、というわけです。今後、同じ手法が他の洞窟にも応用されれば、ヨーロッパの洞窟美術の“制作カレンダー”が一気に書き換わるかもしれません。
もし1万年以上前の人たちが、あなたのスマホの絵文字を見たら、どんなふうに“解読”すると思いますか?
元記事: Hidden charcoal reveals the true age of ancient cave paintings